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廣瀬先生の徒然日記 vol.026

「さて、今月のコラムは何の話題にしよう」なんて話をBarでしていたら、「糖尿病と痛風」と言われました。中高年の方々は気になる人が多いようです。ひとまず、今月は「糖尿病」のお話を。

確かに、2型糖尿病は最も一般的な糖尿病で、10人に9人以上はこのタイプで40歳以上の中高年の方に多いです。なので、気になっている人達が多いのでしょうね。いわゆる生活習慣病とされるのは、2型糖尿病です。2型糖尿病の原因は、遺伝体質、食生活の乱れや運動不足、肥満、ストレスなど、さまざまな要因が重なって発症すると言われています。糖尿病の予防や改善のためには、生活全般を見直し、リスクをできるだけ減らすなど、自分自身でできることもたくさんあります。

糖尿病にはいくつか種類があり、1型糖尿病、2型糖尿病、その他特定の機序や疾患によるものがあります。ここでは、2型糖尿病のお話をしましょう。

そもそも糖尿病とは、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が高くなってしまう病気です。インスリンは膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されて血糖を正常範囲に保つ役割をします。私達が食事をすると、糖質は分解されてブドウ糖になり、血液中に入って全身に送られます。そして膵臓から分泌されるインスリンの働きで、ブドウ糖は細胞内に吸収され、エネルギーとなって私達の活動を支えます。一方、エネルギーとして使われなかったブドウ糖は、インスリンの働きで脂肪細胞の中に蓄えられます。

このように、インスリンは血糖値を調節する重要なホルモンなのです。実は、血糖値を調節するホルモンはインスリン以外にもあります。血糖値を下げるホルモンはインスリンただ1つしかないのに対して、上げるホルモンはたくさんあり、代表的なものは、5つ(グルカゴン、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎髄質ホルモン、副腎皮質ホルモン)です。

かなりアンバランスに見えますよね。低血糖防御の仕組みは、人類の長い進化・歴史の中で、とても大切だったのです。私達の身体にとって、血糖値が下がることは、生命の危機を示しています、食料に乏しかった生活の中では、血糖値が下がることは避ける必要があったのです。一方、我々の進化や歴史の中で、血糖値が高くなっても、いきなり命が危なくなることはないので、血糖値を下げる仕組みはインスリンだけで十分で、食べ過ぎや肥満対策の仕組みが体内に備わっていないわけです。ところが、現代の日本や欧米諸国では、食べ過ぎや肥満対策の仕組みが手薄な部分にフル稼働を強いています。フル稼働を敷いている膵臓のインスリン分泌能が疲れ果て、破綻すると、行き着く先は糖尿病なのです。つまり、食べ過ぎや遺伝的な要因など、なんらかの原因でインスリンの分泌量が少なかったり、働きがよくなかったりすると、ブドウ糖が細胞内にうまく吸収されず、血液中にあふれ出てしまいます。こうした状態が続くと、血液中のブドウ糖の量(血糖値)が慢性的に増え、からだのさまざまな部分に悪影響が出てきます。これが糖尿病です。

血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気(糖尿病の慢性合併症)につながります。また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡(こんすい)などをおこすことがあります(糖尿病の急性合併症)。

合併症を発症すると治療が大変困難です。普段からしっかり血糖値をコントロールして合併症を予防しましょう。
定期的に血液検査を行う、生活習慣を見直す(食生活や運動、ストレス解消など)が必要です。血液検査で数値が異常であれば、薬物投与、インスリン注射が必要になってくるでしょう。
糖尿病の治療は、進行度や合併症の有無などによって様々ですので、ここではまだ症状が出ておらず、血糖値が高いかも?という方や予備軍の方達のための話を中心にします。

まず、糖尿病の治療の目的は、糖尿病があっても、血糖をコントロールして、糖尿病がない人と同じ健康寿命を保つことが、糖尿病の治療の目的です。糖尿病予備軍の方々は、糖尿病を発症しないように、正常に戻すことです。なぜ血糖値をコントロールする必要があるのか?それは、糖尿病による合併症を起こさないために、また、合併症のある方はそれを今より悪くしないために、血糖コントロールが大切です。

具体的には、どうやって血糖値をコントロールするのか?血糖値をコントロールするには、まず食事、運動が大切です。そして薬による治療があります。

 

◎目指すべき血糖コントロール

糖尿病予備軍の方や糖尿病の方は、定期的に血糖値とHbA1cの値をモニタリングしてくださいね。糖尿病の合併症をおこさない、または悪くさせないためには、HbA1cを7%未満にしておくのがいいと言われています。HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したものです。

 


◎糖尿病の食事療法

食事によって、糖がからだに取り込まれます。からだに取り込まれる糖の量やエネルギーのバランスなどを調整するのが食事療法です。糖尿病で、食べてはいけない物はありませんが、1日の必要エネルギーを考えながら食べ過ぎに気をつけましょう。

1)おやつについて

朝食、昼食、夕食の3食以外に間食をすると、体重が増えやすく、血糖コントロールも難しくなります。間食は主治医と相談し、適量を決めて、上手な取り方を工夫しましょう。

2)アルコールの摂取について

少量のアルコールは動脈硬化によいと言われますが、飲み過ぎは肝臓病や癌などにつながります。飲酒に合わせておつまみを食べると血糖値が上がる人がいる一方で、飲酒後には、肝臓に負担がかかるので逆に低血糖になることもあります。飲み過ぎは、血糖のバランスを崩してしまうので、危険です。主治医より許可の出ている方は1日アルコールとして25g以下(日本酒1合、ビール中瓶1本500ml程度)とし、休肝日をつくりましょう。

3)減塩について

糖尿病のある方は、高血圧の予防のために、減塩が大切です。(男性1日8g未満、女性1日7g未満)高血圧がある場合は、さらに食塩摂取量を減らしましょう。(1日6g未満)食塩の摂取が多いと血圧が上がり、腎臓に負担がかかります。また、動脈硬化(血管の老化)が進んで脳梗塞・心筋梗塞などが起きやすいと言われています。普段のお食事に、少し工夫をすることで、塩分を控えることができます。できることから実践してみましょう。

4)その他

腎臓に合併症がある場合、推奨栄養量が病期(第1期から第5期)で異なります。ご自分の腎症はどの段階か、主治医に聞いて、腎臓にやさしい献立を考えてみましょう。また、食事についてカーボンカウントを活用する場合もあります。カーボカウントとは、食事中の炭水化物の量を把握することで、血糖をコントロールする方法です。実際にカーボカウントを行う際は、主治医や管理栄養士の指導のもとに実践しましょう。

 

◎糖尿病の運動療法

運動によって、糖が使われます。また、筋肉の量が増えることで、糖をからだに取り込みやすくします。その上、脂肪が減ることで、血糖値を下げるインスリンが効果を発揮しやすい環境を作りましょう。インスリンの効果を高めて血糖値を下げる運動には、有酸素運動と、筋力トレーニングがあります。運動は、個人の年齢や体調に合わせて、無理なく継続できるものを選んで行なってください。

 

◎糖尿病の薬物療法

糖尿病の薬にはいろいろな種類があります。薬の種類としては、飲み薬と注射薬があります。 飲み薬では、インスリンの分泌を良くするもの・効きを良くするもの、食事でとった糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖の排泄を促すものがあります。注射に は、インスリンの分泌を促す注射や、インスリンそのものを外から補う注射があります。

 

糖尿病についてザクッとご理解いただけましたか? 血糖値が高いと言われた方は、深刻(合併症)にならない内に血糖値を下げる努力をしてくださいね。年末年始は飲み会が多いと思いますが、食べ過ぎ要注意!運動不足要注意!です。

 

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