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廣瀬先生の徒然日記 vol.028

加齢と味覚障害

最近、食事がおいしく感じられない、料理の味付けができなくなった、などを感じるかたもいるのでは?このような味覚の低下や障害が起こるのが「味覚障害」です。塩分や糖分の取り過ぎの原因になりやすく、食欲が落ちることによる低栄養など、二次的な健康被害につながることもあります。
味覚には、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の5種類の基本味があり、多くの食物の味は、これらのいずれか、あるいはその組み合わせとして表現されます。味覚は、舌の表面や口腔内の粘膜に存在する味蕾(みらい)という部位で感知されます。食物中から唾液に溶け出した味物質が味蕾の中にある味覚受容器を刺激して、脳へ信号が伝達されることにより、私たちは味を感じるのです。

私たちが、「美味しい」と感じる時、5種類の基本味に加えて、味以外の要素として「外観・形」「色素」「香り・風味」「食感」「温度」なども美味しさの要素となります。つまり、味刺激が伝達されるとき、「外観・形」「色素」「香り・風味」「食感」「温度」、そして過去の食経験の記憶などの影響を受けているのです。
味覚変化の様々な要因は、加齢、薬剤の副作用、口腔内乾燥、美蕾細胞の障害、亜鉛や鉄などの微量金属欠乏、口腔内の荒れ・炎症、神経障害、心理的な緊張・不安など様々です。
味蕾の総数は若年者ほど多く、高齢者では新生児期の半分から3分の1になるといわれています。ただし加齢に伴う味覚低下が自覚される割合は、聴力低下に比べるとかなり少ないとされています。

薬剤性味覚障害は、高齢者の味覚障害の原因の中で最も頻度の高いものの一つで、血圧降下剤、利尿剤、肝治療剤、消化性潰瘍治療剤など250種類以上の薬剤で味覚障害が引き起こされる可能性があるとされています。薬剤によっては唾液分泌を抑制したり、亜鉛代謝に作用することにより味覚の低下を引き起こします。亜鉛は必須微量元素のひとつであり、たくさんの金属酵素に組み込まれ主要な生体の代謝に関与しています。その一方で、食品添加物の中には、亜鉛の吸収を阻害したり尿中排泄を増加させる物質が多く含まれています。低亜鉛血症は、全身疾患性や薬剤性の味覚障害例でも高頻度に見られ、亜鉛欠乏が多くの味覚障害に関与していると考えられています。従って、亜鉛欠乏を背景にもつ味覚障害例では亜鉛剤の服用が治療として行われます。亜鉛含有量の多い食品は、抹茶、緑茶煎茶(一番茶)、玄米茶、ココア、牡蠣、数の子、煮干、あまのり、てんぐさ寒天、きな粉、カシューナッツ、いりアーモンド、いりゴマ、麩などがありますので、いつもの食事に取り入れてもいいかもしれませんね。最近、美味しいと感じない場合、「本来の味と異なって感じる」「味を強く感じる」「味を感じにくい」「食感が変わった」などがあると思います。そのような方は、いつもの食事に次のことを考えてみてはいかがでしょう。


「本来の味と異なって感じる」

• 違和感のある味を避け、色々な味付けを試してみましょう
• 塩味や醤油を苦く感じる場合は控え、甘味や酸味等 を利用しましょう
• 旨味・香りを加えてみましょう
• 肉・魚等はアク抜き・臭み抜き等を行いましょう

<食事の工夫例>

  1. 焼魚:塩・酒で臭みを除き、生姜等の風味を追加 調味料は食べる時に好みの味を選択
  2. 野菜:醤油、ぽん酢、マヨネーズ等好みの味を選択 ミルク煮等、まろやかな味にする
  3. みそ汁:だしを濃い目に取る (旨味・風味)
  4. みょうが、三つ葉、葱、生姜等 (香り) 追加

「味を強く感じる」

• 強く感じる味の調味料、素材の利用を避け、 他の味付けをメインに使いましょう
• 食べる時に味付け出来るようにしてみましょう
• “美味しさの要素”をプラスしましょう!

<食事の工夫例> ♪塩味を強く感じる場合

  1. 焼魚:塩・酒で臭みを抜き、味付なしで焼く レモン・かぼす等を添える (酸味の利用)
  2. 野菜:だし醤油(旨味)をかけずに添える (量↓) かつお節・ごま・刻みのり等で風味追加
  3. みそ汁:味は薄めに、だしを濃く (旨味の利用) ポタージュ等塩味↓でも美味しい料理

「味を感じにくい」

• 味付けをハッキリさせてみましょう (濃いめに付ける、香辛料・香味野菜を使う 等々)
• 香り・旨味を利用し、風味・深みを加えましょう
• 料理の温度を人肌程度にしてみましょう

<食事の工夫例>

  1. ごはん:梅干し・ふりかけ・佃煮等をつける
  2. 焼魚:あんをかけ、味をまとわりつかせる(カレー粉等香辛料を利用 マヨネーズ等コクのあるものを利用など)
  3. 野菜:ごまだれ、白和え等コクのある味 だし・レモン等、旨味・風味をプラスする
  4. みそ汁:だしを濃く、味噌の量を好みで調節 ごぼうやきのこ類等旨味の出る食材

「食感が変わった」
(食品が乾燥して感じるとき)

• 口腔内乾燥がある場合は、『飲料を一口含む』『あんかけ料理や汁物と一緒に摂る』 等、食べ物に水分を補い、なめらかにしましょう

 

 


いずれにしましても、味変化を感じる際は

  1. まずく感じる味の食べ物は避けましょう
  2. “比較的食べられる物”の味や特徴を知り、 美味しさの要素も積極的に取り入れましょう

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