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廣瀬先生の徒然日記 vol.024

先月号では、「歩くこと」のお話をしました。朝晩は、涼しくなってきましたので、ちょっと外出して「歩くこと」もできるようになったのではないでしょうか。「歩くこと」は、先月号の足腰を鍛える他、ダイエットにも有効です。今更、言うまでもなく、これらを下げるには、食事制限や運動が重要になってきます。月は、コレステロールのお話をしたいと思います。

皆さんの中には、通院している病院で、あるいはテレビなどの情報番組で「高コレステロール血症」「高脂血症」「脂質異常症」などの言葉を聞いたことがある方がいると思います。
「高コレステロール血症」「高脂血症」「脂質異常症」は、いずれも血液中の脂質成分が異常値になっている状態を指しています。
2007年から「高コレステロール血症」と「高脂血症」を総称して、「脂質異常症」と呼ぶようになりました。

「脂質異常症」は大きく分けて下の3つがあります。

血液中には脂質として、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類があり、それぞれ重要な働きをしています。
コレステロールは、人の細胞膜や、消化吸収に必要な胆汁酸の材料、ホルモンの材料になる重要な物質です。
中性脂肪は、貯蔵エネルギーになる他、保温の役割を果たしたり、外部からの衝撃を和らげたり、内臓を固定したりして、重要な役割を果たしています。

しかし、これらの脂質が多すぎると問題になってくる場合があります。
脂質異常症は、これらの脂質の中でも特に悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、あるいは善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる、などの状態を示す病気のことです。

LDLコレステロールは、血液中でコレステロールを肝臓から末梢組織に運んでいますが、多すぎると血管の壁に入りこみ、動脈硬化を引き起こす一番の担い手になるので、悪玉コレステロールと呼んでいます。
HDLコレステロールは、血管壁の余ったコレステロールを肝臓へ戻し、動脈硬化を進行させないように働くので、善玉コレステロールと呼ばれています。
中性脂肪は、多くなりすぎると肥満や脂肪肝をきたし、動脈硬化を引き起こす原因になります。

脂質異常症の診断基準は下のようになっています。

動脈硬化を進行させる因子は、脂質異常症以外に高血圧、糖尿病、喫煙、家族の既往歴などがあります。しかし、近年、脂質異常症は動脈硬化の危険因子の中でも最大の要因であると言われています。

脂質異常症、つまり悪玉コレステロールや中性脂肪が高い、あるいは善玉コレステロールが低い状態を放置すると、症状のないまま動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞になり、生命が危険に晒されたり、後遺症が残ったりします。脳梗塞や心筋梗塞は、日本人の死因の上位を占めていますので、症状がないから大丈夫だろうと思わないで、進行を防ぐために病院で主治医と相談し適切な治療を続けることが大切です。

もしも、脂質異常症と言われたら、どのように動脈硬化を予防したらよいのでしょう?自己管理でできる治療は、まず食事療法、体重の是正、禁煙、運動療法といった生活習慣の改善になります。普通、血液検査値の基準値はみんな同じですが、脂質異常症の治療目標は、一人ひとり違います。

心筋梗塞や狭心症をすでに起こしてしまって治療中の方や、糖尿病や高血圧、喫煙などの他の動脈硬化を進めやすい環境にある方や中高年の方は、より低いLDLコレステロールを目指さねばなりません。

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、下の図のように、これらのリスクに応じた目標値が決められています。

それでは、もしも脂質異常症だと言われたら、生活習慣のうち、食事と運動のお話をしましょう。

まず、食事について。
肥満傾向が認められる場合には、まず標準体重を目標に減量をすることをお勧めします。
標準体重は身長(m)×身長(m)×22で計算できます。
減量は、急激にするのはよくありません。1か月間で現在の体重の5%程度の減量から始めるのがポイントだと思ってください。

1日の摂取エネルギーは、次のように計算して求めます。
1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×25~30(kcal/kg)

1. コレステロール摂取量は1日300mg以下にしましょう。
2. 動物性の脂肪を減らし、魚や植物性の脂を多くしましょう。
3. 食物繊維を多くとりましょう(食物繊維はコレステロールの吸収を抑えます)。
4. 魚、大豆製品を多くとりましょう。
5. 清涼飲料水や菓子類などの過剰摂取は控えましょう
6. アルコールは1日25g以下に。(ビール:中瓶1本、日本酒:180ml、焼酎:100ml程度、ワイン:200ml程度が目安です)。
7. マーガリン、ショートニング(食用加工油脂の一種)、菓子類に含まれる悪い脂(トランス型不飽和脂肪酸)の過剰摂取は控えましょう

コレステロール値が高いと言われた時、コレステロールの摂取量が問題になるのは当然ですが、摂取する脂肪の種類にも気をつけてください。

食事の脂質の主な成分は脂肪酸という物質です。脂肪酸には、悪玉コレステロールを上昇させる脂肪酸(飽和脂肪酸)と、逆に悪玉コレステロールを低下させる脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)があります。しかし、悪玉コレステロールを下げる効果があるからと言って、過剰摂取をするとカロリーオーバーになるので気をつけてください。

また、マーガリンやショートニングのように植物油を加工したときにできるものや、脂質を高温で加熱したときできるものをトランス脂肪酸といいます。大量に摂取すると、悪玉コレステロールを増やし、一方で善玉コレステロールを減らし、結果、動脈硬化のリスクを高めるといわれます。

もしも、LDLコレステロールが特に高いと言われたら
上に記載した食事制限をしても改善しない場合は、コレステロール摂取量200mg/日以下にしてみましょう。また、悪玉(LDL)コレステロールを上げる脂質を避けることも良いでしょう。

もしも、中性脂肪が特に高いと言われたら
清涼飲料水やスナック菓子は、糖質が多く、中性脂肪を増やしやすいので、摂取量に気をつけましょう。そして、アルコールはやめましょう。
次に、運動ですが、食事療法と合わせて継続して運動をすることをお勧めします。運動することによって、中性脂肪が低下し、HDLコレステロールは上昇します。このほか、血圧を低下させる、糖尿病の血糖コントロールができるようになります。運動不足で体力、とくに持久力が低下している人ほど、動脈硬化が進みやすく、がんを含めあらゆる死亡率が高いことも分かっています。最適な運動は有酸素運動です。1日30分程度(1週間合計180分以上)、毎日行うのが理想的です。運動の強さは、心拍数110~120/分程度を目安に、ちょっときついけど続けられる、と感じる程度。くれぐれも無理は禁物です。散歩、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、エアロビクスなど、1日15分続けると脂肪が燃えだすと言われています。
しかし、体の状態や仕事の都合などで難しい方はたくさんいらっしゃるでしょう。その場合、各個人の健康状態や仕事などの生活パターンに合わせて無理せず体を動かしてください。体を動かすことについては、先月号でも言いましたが、無理のないように、そして続けることができるようにを、心がけてください。お勤めの方は、「階段を利用する」、家にいる人は、「椅子に座って体を動かす」でも良いでしょう。続けやすい方法を各自見つけてくださいね。また、現在、何らかの疾患を抱えている方は、主治医と相談して、無理のないようにしてください。

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