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廣瀬先生の徒然日記 vol.027

今月は高尿酸結晶(痛風)のお話です。皆様の中には予備軍やすでに痛みのある方もいるのでは?

痛風とは尿酸が体の中にたまり、結晶を作ることにより色々な障害が起きる病気です。 2018年12月に8年ぶりの改訂となる「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(日本痛風・尿酸核酸学会) 第3版」が出されガイドラインによると、次のことが報告されています。

それでは、改めて痛風のお勉強をして、痛い思いをしないようにしましょう!


〜痛風ってどうしてなるの?〜

尿酸は全ての人のからだの中に一定量あります。尿酸は、血液などの体液に溶けて循環し、尿の中に濾し取られて捨てられます。一部は、消化管から排泄されます。ところが、何らかの原因で血液中の尿酸の濃度が上昇して飽和濃度を越えると、からだの中に蓄積してきます。飽和濃度を超えて溶けなくなった尿酸はナトリウムと塩を作り、結晶になります(図;関節液中の尿酸ナトリウムの針状結晶;ウイキペディアより)。尿酸の濃度が高い状態が続くと、この尿酸塩の結晶が関節の内面に沈着してきます。痛風発作は、尿酸塩に対してからだの防御機構である白血球が反応し、攻撃する時に起こります。


〜尿酸値の正常値は?〜

ガイドラインでは、7.0mg/dLを正常値の上限とし、この値を超えると高尿酸血症と定義しています。女性の場合は、女性ホルモンが尿酸の腎臓からの排出を促進するため、平均値が男性よりも1.5 mg/dLぐらい低くなります。閉経後は徐々に数値が上がる傾向にありますが、閉経前で、尿酸値が5.5 mg/dLを超えたら、生活習慣病のリスクに注意が必要とする専門家もいます。


〜どんな症状?〜

尿酸塩が関節に溜まると痛風発作になります。痛風発作が起こる場所は足の親指の付け根が7割を占め、その他足首やくるぶし、膝や耳にも痛みが出る場合もあります。痛風発作は尿酸値が7.0mg/dlを超える状態が数年間続くと起こります。ガイドラインでは、尿酸値9mg/dL台だと、6mg/dL未満に比べて、5年間の痛風発作発症率が40倍、尿酸10mg/dL以上だと、6mg/dL未満に比べて、5年間の痛風発作発症率が60倍と報告されています。
尿酸は、他の臓器にも溜まります。なかでも皮下にたまりやすく、皮膚の下に結節ができます(痛風結節)。痛風結節はまれには脊髄にたまり神経症状の原因になる事もあります。腎臓も尿酸が溜まりやすく、高尿酸血症や痛風の人は腎機能に注意が必要です。さらに、痛風の患者さんでは心血管障害や、脳血管障害などの生命を脅かす成人病を合併する割合も高いのです。


〜痛風の合併症はあるの?〜

痛風の合併症について、もう少し詳しく話しましょう。今回のガイドラインで明らかになってきたのが腎障害です。以前から腎障害を促進する可能性が指摘されていましたが、腎障害を持っている高尿酸血症患者さんに尿酸値を下げる薬(尿酸降下薬)を投与すると、腎障害の進行を遅らせることができるというエビデンスが得られています。
加えて、尿酸値が高い人では、肥満やメタボリックシンドロームを伴うことも多いです。さらに、高血圧の人、肥満の人、高脂血症(LDLコレステロールや中性脂肪が高い)の人も痛風患者や尿酸値が高い人に多く、生活習慣病との関連も指摘されており、その結果、脳血管障害(脳出血や脳梗塞)や心血管障害(狭心症や心筋梗塞)の促進因子になっている可能性も考えられることが指摘されています。こうした理由から痛風がなくとも、ほかの検査数値同様に尿酸値を気にかけ、肥満解消や尿酸値を下げるような生活習慣を取り入れること。そして、生活習慣の改善を試みても数値が高いようなら、かかりつけ医の受診が勧められるとアドバイスする医師もいます。
以上のような、合併症が痛風や高尿酸血症と直接関係しているのか、間接的な関係なのかについての結論は、これからの研究成果を待つことになります。


〜生活習慣改善のポイント〜

もしも、健康診断や人間ドックで、「尿酸値が高め」と指摘されたら、生活習慣の改善を始めましょう。
そのポイントは次の5つです。

1:アルコールの過剰摂取に注意
2:プリン体の多い食物を摂りすぎない
3:腹八分目、食べすぎない、適正体重を心がける
4:水分を十分に摂る
5:運動、とくに有酸素運動を心がける


1:アルコールの過剰摂取に注意

アルコール摂取はそれ自体がリスクです。つまり、プリン体を含むか含まないかは関係ありませんので、飲み方を工夫する必要があります。アルコールそのものに尿酸の排出をブロックする作用があるためプリン体ゼロと表示しているアルコール飲料であっても飲み過ぎには注意が必要なのです。飲酒は、20~25g/日以下が適量とされています。ビール500mL、日本酒1号、ワインなら1グラス、ウイスキーダブル1杯、焼酎では90mL程度を目安にして、休肝日を取ることも心がけましょう。ビールのプリン体は尿酸になりやすく、体内に吸収されやすいことがよく知られています。対して、ワインには、尿酸排出作用が期待できるポリフェノールが含まれていますが、ワインであっても、「プリン体ゼロ」と表示しているアルコール飲料であっても、飲み過ぎには注意しましょう。


2:プリン体の多い食物を摂りすぎない

ガイドラインでは、プリン体の摂取量を1日400mgに抑えることが推奨されています。専門家のアドバイスは、「プリン体含有量の多い食品は1回の食事で50g程度にして、3食のうち1食でも、海藻類、野菜、大豆製品、卵などプリン体が少なめの食材を中心とした食事を選択すると、摂り過ぎを防ぎ、かつ栄養バランスも良くなるでしょう。意外かもしれませんが乳製品もお勧めです。牛乳やヨーグルトといった乳製品はプリン体が少なく、乳タンパク質のカゼインに尿酸の排泄を働きがあるためです」 とのことです。
尿酸値を下げやすい食品成分としては、タンパク質、ビタミンC、ポリフェノール、フラボノイド、食物繊維であると報告されています。乳製品やコーヒーの摂取量が多い人ほど尿酸値が低いという疫学調査の報告もあります。また、ヨーグルト・納豆などの発酵食品は、腸内環境を整えるという意味でも勧められる食材です。
食品中のプリン体含有量はこのコラムの最後に表で示しました(医者いらずの食べ物辞典より)。プリン体含有量の分類は下の表のようになっていますので、尿酸値の高い方、痛風の方は参考にしてください。


3:腹八分目、食べすぎない、適正体重を心がける

尿酸値が高い人ほど、メタボリックシンドロームの頻度が高く、内臓脂肪が蓄積している人ほど、尿酸値が高くなるという研究報告があります、つまり、肥満と尿酸値は互いに強い関連性があることが研究によりわかってきました。そのため、肥満を解消することで、尿酸値の改善も期待できます。食事は腹八分目にしてバランスのよい食事と適度な運動を取り入れ、適性体重を維持するよう心がけましょう。


4:水分を十分に摂る

体内の尿酸の排出を促すために、水分をとり十分な尿量を確保しましょう。ただし、果糖や砂糖の多いジュースなどを摂りすぎないようにしなければなりません。なぜなら、砂糖入り飲料を1日に2回以上飲む人の痛風発症リスクは、2日に1回以下の人と比べて1.9倍になるという報告があります。また、果糖の過剰摂取はメタボリックシンドロームや尿路結石の促進とも関連していると報告されています。
成人が1日に必要な水分摂取量は、体重1kgあたり50mlと言われています。例えば、体重が50㎏の方では2.5L、60 kgの方では3L、70㎏の方では3.5Lとなります。 水分摂取は、直接口から飲むだけでなく次の3つの方法で行われています。
①体内で代謝により生成される水分(約0.3~0.5L)
②食事により吸収される水分(約1.0~1.2L)
③直接口から摂取する水分
このように、代謝により生成される水分と、食事からの水分で、約1.3~1.7Lほどありますので、直接口から摂取しなければならない水分量は、全体の摂取水分量の約半分にあたる約1.0~2.0L(その方の体重によっても異なります)になります。ただし、慢性腎臓病の方や、腎臓移植後の方などの水分管理については、かかりつけ医の先生と相談して適切に行ってください。


5:運動、とくに有酸素運動を心がける

適度な有酸素運動は、尿酸値を下げるだけでなく、生活習慣病全般にわたり有効な改善効果が期待できます。具体的には、歩く,水泳,ジョギングなどで脈がやや速くなる程度の有酸素運動が推奨されます。一方で、激しい運動は一時的に尿酸値を上げてしまうといわれていいますので注意してください。年齢や体力、あるいは何らかの疾患がある方は、かかりつけ医と相談して無理のない運動をしましょう。
最後になりますが、腹八分目の食生活と適度な運動で肥満に気をつけること、お酒の飲みすぎないことは、生活習慣病すべてに共通することです。健康寿命を長くするために、つまり、長く、健康で楽しく、できるだけ病気にならないための生活習慣を身につけましょう。

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