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廣瀬先生の徒然日記 vol.042

みなさま、こんにちは。
行動制限がなくなり、年末年始は、実家へ帰省された方や旅行に行かれた方も多いかもしれませんね。一方で、まだ心配でお出かけを自粛されるかたもいるかもしれません。免疫力をアップして、心配なくお出掛けしたいものです。免疫力は、既往症、生活習慣など様々な要因で上がったり下がったりします。本日は、「マインドコントロール」と脳機能、ストレス、免疫との関係をお話ししましょう。

●マインドコントロールとは

ここ数か月、某教会がクローズアップされ問題が大きく報じられてきました。この中で、「マインドコントロール」という言葉をよく耳にされたと思います。

「マインドコントロール」とは、自分以外の人から強い影響を受けて意思・行動・信念などが強く形成され、支配者の意のままに行動してしまうことです。脳の仕組みを巧みに利用・コントロールしているため、マインドコントロールにかかっていない他人から見ると「おかしい」と思うことでも、マインドコントロールにかかっている人は「正しい」と思って行動してしまいます。「私は絶対大丈夫。そんな変なものにかからない。」「頭の悪い人がなるのでは。」そのように考えている人は多いですが、そのような人が意外と危ないかもしれません。

「マインドコントロール」とよく似たものに「洗脳」があります。「洗脳」は拷問や監禁・薬物を使って強制的に精神構造を変化させるものです。体罰を与えられつづけているうちに、支配者の言う通りに行動するようになります。一方、マインドコントロールは物理的に本人に何かをするわけではありません。言葉巧みに誘導して本人に信じ込ませます。洗脳よりもマインドコントロールの方が巧妙な手口で長期にわたってその人に影響を与え続けます。

一方、「セルフコントロール」というものがあります。「セルフコントロール」は、本人に役立つポジティブな意味合いです。 「セルフコントロール」は誘惑や衝動に自分の意思で感情・思想・行動を制御するプロセスです。たとえば、プロスポーツ選手は常に高いパフォーマンスができるようにイメージングトレーニング等を実践している方が多いと考えます。セルフコントロールができるようになると、仕事や人間関係、健康などにおいて多くのメリットがあります。セルフコントロールをできるようにする方法の一つとして、「マインドフルネス」があります。ウィキペデアには「マインドフルネスとは、現在において起こっている経験に注意を向ける心理的な過程である。 瞑想およびその他の訓練を通じて発達させることができるとされる。」と記載されています。

●「マインドコントロール状態にあるかどうかを判断するための5つの行為(消費者庁有識者検討会委員 西田公昭氏の見解に基づく)」(参考:産経新聞 2022年11月10日記事)

記事によると、対象者(マインドコントロールの)をマインドコントロール状態に置く「行為」のポイントは5つあるといいます。「①社会的に遮断する ②恐怖感や無力感を覚えさせる ③問題を唯一解決できる権威者を置き、依存させる ④リアリティーを持たせる演出を実施する ⑤従前の価値観を放棄させる」の5つだそうで、全部が揃っている必要はないとのこと(下の表)。

以前、破壊的カルト教団が問題になった際、マインドコントロールは3段階で達成すると聞いたことがあります。①解凍、②変革、③再凍結の3段階で、それぞれ①解凍は「人格を崩壊させる」、②変革は「教え込みの過程」、③再凍結「新しい人格を作り上げ強化する過程」だそうです。(「マインドコントロールの恐怖」スティーブン・ハッサン著)

スティーブン氏の3段階に比べて、西田氏の5つのポイントは、「誰でもマインドコントロールを受けてしまう可能性がある」と警告しているように感じました。

●マインドコントロールと前頭前野(ぜんとうぜんや)

新聞の記事を読むと、マインドコントロールの対象者を「客観的な判断ができないようにする」「他人の意見を聞かないようにする」「物事を二元論(善悪)で判断させる」という脳判断をさせることがマインドコントロールの成功であると思われます。

彼らの手口としては、「マインドコントロール」の対象者を2泊3日や数日のセミナーに参加させ、社会と隔離し、睡眠不足でストレス状態にすることで「前頭前野」や「扁桃体」を異常状態(正しく客観的に判断できない)にすることで、「マインドコントロール」を完成させる。 怖いですね~。ひっかからないように、気を付けましょう。

この脳の判断は脳の「前頭前野」と呼ばれる場所でなされます。「前頭前野」は、記憶や感情の制御、行動の抑制など、さまざまな高度な精神活動を司っています。つまり、「考える」「記憶する」「アイデアを出す」「感情をコントロールする」「判断する」「応用する」など、人間にとって重要な働きを担っているため、「脳の中の脳」と言われ、人間が人間らしくあるためにもっとも必要な存在といえます。 脳は、大きな一つの塊ではなく、異なった機能を持ついくつかの領域に分かれています(大脳、小脳、脳幹)。この大きく分けた3つのうち、最も大きいのが大脳です。大脳の「前頭葉」の大部分を占めるのが「前頭前野」です。(図 参照:東北大学+日立ハイテクによる脳科学カンパニーNeUより)。

実は、脳を健康に保ち、元気に発達させるためには、この前頭前野を常に刺激し、活性化させることが一番大切なことなのです。もしも、「前頭前野」が衰え活動が低下すると、「もの忘れ」が増えたり、考えることができなくなったり、感情コントロールができずに些細な出来事で怒りを爆発させてしまったり(キレたり)、やる気の低下などにつながります。

つまり、「マインドコントロール受けている状態」とは、「前頭前野が衰えてしまった状態」となり、「考える力」が無くなり、客観的な判断や感情のコントロールなどができていないと思われます。マインドコントロールを受けないようにするためには「前頭前野」を健康に保つことが重要なのです。

●マインドフルネス

先ほど述べた「マインドフルネス」によって、前頭前野・前帯状回および線条体が活発になり注意力が鋭くなっていきます。感覚や思考、感情を快・不快とか正・誤、好き嫌いの判断をすることなくありのままに受け入れる態度が養われると、前頭前野と辺縁系の情報交換がうまく進み感情のコントロールが出来るようになります。

「マインドフルネス」は、瞑想の手法から宗教性を排除したものです。医療などさまざまな場面で活用されており、現代を代表する企業(ヤフー,グーグル,メルカリ等)の多くがマインドフルネスを取り入れているそうです。仕事前に10分間程度行うことで、ストレスの軽減、集中力の向上、仕事の効率を上げることができます。

「マインドフルネス」の瞑想法はここでは紹介しませんが、気になる方は心理療法士やカウンセラーなどにご相談されるのがよろしいでしょう。間違っても変な団体に掴まらないようにお願いします。

また、「マインドフルネス」以外にも「セルフコントロール」に役立つ方法は沢山あると思いますので、適切な専門家にご相談されるのがいいでしょう。

●ストレスと前頭前野

数々のストレスに対して恐怖や不安の感情が発生する過程において、脳内の「扁桃体(へんとうたい)」という部分が重要な役割を果たすことがわかっています(図 参照:NPO法人 日本ヨガ連盟より)。 扁桃体は、情動と感情の処理や直観力、ストレス反応に重要な役割を果たしており、主に、「恐怖」「不安」「緊張」「怒り」などのネガティブな感情に関わっています。そして、この扁桃体をコントロールしているのが「前頭前野」です。「前頭前野」が正しく活動し、扁桃体をコントロールする力を高めることができれば、理性を保ち感情に支配されない脳を維持することができます。

理性の脳である前頭前野が、暴走しがちな扁桃体の過活動を抑えてくれるおかげで私たちは感情を上手くコントロールしています。しかし、ストレス状態が長く続くと、前頭前野の働きが低下して扁桃体を制御できなくなり、不安や恐怖の感情が強くなってしまいます。実際、うつ病では、前頭前野にある「背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)」の活動低下と扁桃体の過活動が認められます。 背外側前頭前野を活性化すること、あるいは、扁桃体の過活動を抑制することで、これらの脳機能を改善に導く治療があります。前頭前野が活性化すると、扁桃体の過活動を抑制する力が回復し、意欲・判断力・思考力が向上します。詳しく知りたい方は、うつ病などを治療する病院や医院で問い合わせてみましょう。

社会や環境から受ける心理ストレスは多様な心身の変化を誘導します。適度なストレスは生体の防御反応を誘導しますが、過度なストレスは抑うつなど心の変化を誘導し、うつ病のリスク因子となります。ストレスによって、扁桃体が過剰な活動をし続けると、些細なストレスに対しても過敏に反応してしまい、慢性ストレスとなって不安障害、うつ、パニック障害といった精神障害につながる恐れがあります。

最近、ストレスによって免疫に関係した分子を介して内側前頭前皮質の神経細胞の応答性減弱・萎縮、うつ様行動を誘導することがわかりました。炎症で脳の神経細胞が傷害されると、海馬や前頭前野の重要な機能である記憶力、注意力、感情制御、思考、行動にも影響します。ストレスは感情だけでなく、記憶や認知機能にも悪影響を及ぼすのです。

脳がストレスを感知すると、脳からの司令系統により、全身への自律神経機能亢進や副腎ホルモンの分泌が促進され、ストレスが緩和されホメオスタシスを維持しようとします。通常の理想状態では、交感神経と副交感神経はそれぞれ作用する免疫システムが異なり、双方がバランスよく免疫システムに働いてくれています。過剰なストレスやストレス状態が長期化することによって、自律神経が乱れると、免疫システムのバランスが崩れて身体と脳に炎症を起こし、免疫力が著しく低下します。

ストレスを自分自身で判断することは難しいかもしれません。特に頑張り屋さんなら、気づきにくいかもしれません。キッチリした性格の方もストレスに鈍感かもしれません。あるいは、ストレスを感じていても、キッチリすることをやめられないのかもしれません(だからといって、全て適当でよいわけではありません)。 ストレスは身近な方が気づいてあげることが大事でしょう。自分自身で判断するなら、「睡眠」の状況がわかりやすいかもしれません。 健康な脳を維持するために、「前頭前野」が正しく機能できるよう心がけましょう。

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